腰すわりとおすわり
生後5−6ヶ月の赤ちゃんに大人がお座りの姿勢をとらせてあげると、手を前についた状態で少しの間その姿勢を維持してくれますが、この状態は、腰がすわってきた時の状態であり本当の意味でおすわりができるようになったわけではありません。
本当のおすわりは、寝た姿勢から自分の力だけで起き上がり、足を前に投げ出し、背筋を伸ばした状態(上のイラスト)です。この背筋をまっすぐ維持したおすわりを獲得するためには、体幹をつけることがとても必要で、そのためには、ずり這いやはいはいをしっかり行いことがとても大切です。個人差はありますが、安定したおすわりができるのは10ヶ月頃。このおすわりができる前に、ハイチェアやおすわり椅子など、赤ちゃんにおすわりをさせてしまう道具を利用することで発達の妨げになることがあります。このような道具を利用するのは、主に離乳食を始める時期だと思いますので、離乳食をあげる時の姿勢についても合わせて、ご説明します。(離乳食のあげ方についての詳しい説明はコチラ)
〜腰すわり時期〜
ずり這い、はいはいを十分させてあげる
無理に座らせようとしない
赤ちゃんを座らせようとする道具を使わない
椅子に座らせる時期は自分で姿勢を維持できるようになってから
骨盤が前傾になるようにサポートする
縦抱きの時には骨盤を支え、全身で体を受け止める
抱っこ紐に抱っこしてもらわない
〜おすわりができたら〜
椅子やおすわり道具に座らせない
自分の力で行うおすわりを大切にする
背中が曲がっているとき、左右差があるときは
マッサージをしてあげる
〜離乳食の時の姿勢〜
おすわりができるまでは、
離乳食は保護者の太ももに乗せて食べさせる
つかまり立ちをしていたら
立って食べさせてもオッケー
離乳食椅子から抜け出すなど
自分から座らなければ座らせない
座る場合は足の裏がつく椅子を用意する
椅子に深く座らせない
椅子に長い時間座らせない
離乳食開始時期はベビーバスで床に座って
食べさせるのも⚪︎
\合わせて読んでほしい/
離乳食のあげ方についての詳しい説明はコチラ
歯並び基礎知識はコチラ
ずり這い、はいはいを十分させてあげる
おすわりはずり這いやはいはいの延長線上にある発達です。寝転がった状態から状態を起こし片肘で体を支える斜め座りができると、次に手のひらで体を支える片手すわりができるようになり、体を垂直に起こす、おすわりへと移行していくのですが、体をまっすぐ維持するためには、ずり這いやハイハイを十分行い体幹をやすないこともとても大切です。5ヶ月ごろになると腰が座り、バウンサーやお座り椅子に入れる方も多くおられすし、赤ちゃんも視野が変わることで、おすわり椅子に入れてもらうことを好みますが、子供の体を正しく発達させるためには、自分の力で動きながら次の動作を獲得する時間が大切です。それがずり這いやハイハイです。ご機嫌に過ごしてくれるので家事が捗り、子育てのお助けアイテムとして重宝されることが多いのですが、
体が固定された状態や自分が意図した重心でない時間が長く続くことで、筋肉や関節をこわばらせることで、ハイハイやずり這いにぎこちなさが生まれ、その先のお座りや、タッチにも影響を及ぼします。体が緊張した状態は、大人でいうと寝違えたような状態です。赤ちゃんはその辛さを泣くことでしか表現できないため、夜も抱っこしていないとすぐに起きてしまったり、癇癪が激しかったり、そりかえって口が閉じられない状態が長く続くと、口呼吸から慢性鼻炎を引き起こしたり
、ベロが上顎につかないので、歯並びにまで影響が及びます。
ずり這いハイハイを赤ちゃんの思うがままにさせてあげる時間を大切にしましょう。
無理に座らせようとしない
赤ちゃんは自分が体が成長する動きを本能的に知っています。その動きを思うままにさせてあげることが、何よりも体を育てますので、赤ちゃんが座りたくないと言っている時に、無理に座らせるのもは控えましょう。またこのような状況は主に離乳食をあげる時間に起こると思いますが、座らそのお話が離乳食の与え方で説明で詳しく説明しています。
赤ちゃんを座らせようとする道具を使わない
こっちらはズリバイ、ハイハイをたくさんさせてあげるの項目をお読みください。
椅子に座らせる時期は自分で姿勢を維持できるようになってから
離乳食の開始時期の目安とされる5−6ヶ月ごろになると赤ちゃはおすわりの姿勢をとらせてあげると数秒間その手を前につきその姿勢をとることができます。しかしこの状態は、腰がすわってきた状態であり、おすわりができているわけではありません。自分で姿勢維持ができない時に、椅子に入れられてしまうと、体の重心が不自然になり、関節や筋肉をこわばらせてしまいます。
離乳食時におすわり椅子を使うのは寝返りから自分の力だけで状態を起こして、足を前に投げ出した状態で背筋を伸ばして座れるようになってからにしましょう。その時期になると、椅子を用意した時に、足を床につくことで、自分の力で体を支え、背筋をまっすぐした状態で食事ができます。
歯並び基礎知識でもご説明していますが、背中が曲がっている状態だと、顎が上がり、ベロを上顎につけた状態での食事ができません。ベロも思うように動かないため誤嚥の原因にもなります。
骨盤が前傾になるようにサポートする
背筋をまっすぐ伸ばすためには骨盤の角度が重要です。背中が曲がっているこの場合は骨盤の向きが後屈という状態になっています(イラスト)
骨盤を前傾にしてあげるには、体をマッサージして筋肉をほぐす、ハイハイをたくさんさせてあげること、
自力でのおすわりを獲得している場合は、骨盤から腰、背中、首までの背骨を下から上にさすってあげると骨盤が立ちます。
また、縦抱きの時に骨盤を支えた抱っこができているか、抱っこ紐に抱っこしてもらう時間が長くないか普段の暮らし方を振り返ってみましょう。
縦抱きの時には骨盤を支え、全身で体を受け止める
赤ちゃんの腰がすわってくると、縦抱きも安定してできるようになりますが、この時に大切なのは骨盤を支え、全身で赤ちゃんの体重を支えることです。
赤ちゃんの顔は保護者の顔の横になるような高さで抱っこすると、この抱き方ができます。最近の抱っこ紐では骨盤の角度を意識したものもありますが、保護者の方の手を添えず抱っこ紐だけで抱く場合、赤ちゃんの体重が全て腰や骨盤に集中してしまいます。どんな抱っこ紐を使う場合でも、必ず大人の手で骨盤を支え、赤ちゃんの体重は大人が受けてあげるようにしましょう。しかし、そのような抱き方をしていると、抱っこしている大人の体は本当に辛いです。辛くなるほど抱っこの時間が長くなってしまう状況を見直す必要があります。抱っこしないと寝ない、泣き叫ぶなどのときは赤ちゃんの体がこわばり、寝違えているような状態になっているかもしれません。マッサージ(身体調和支援、バビーマッサージ、童歌)で体をほぐしてあげましょう。
ワンオペ育児で抱っこ紐を使わないと生活が成り立たない場合、重たい物の買い物は通販やネットスーパーを利用したり、赤ちゃん用の買い物カートがあれば、そちらに載せ替えてあげたり、抱っこ紐の使用時間を少なくしたり、両手を開け、骨盤を支える抱っこを行える工夫をしましょう。
抱っこ紐に抱っこしてもらわない
前の項目でも抱っこ紐で気をつけるポイントは記載していますが、抱っこ紐は落下防止のための紐と捉え、赤ちゃんの体重は保護者が支えるようにして抱っこしましょう。
〜おすわりができたら〜
椅子やおすわり道具に座らせない
椅子やおすわりの道具は赤ちゃんの自然な動きを止めてしまいます。自力でのおすわりができるようになっても、必要でない時におすわりの道具に入れるのは避けましょう。
自分の力で行うおすわりを大切にする
おすわりができるようになるとおもちゃで遊んだり、床にじっとすわっている時間も長くあると思います。このおすわりは赤ちゃんが自分で重心を安定させながら、自分の意思で行なっているものなので、何の問題もありません。しかしまれに、ハイハイなどの移動をほとんどせず、座ってばかりいる子がいます。この場合は、ハイハイができない理由があるかもしれません。体が緊張していたり、こわばっていたり、これまでの環境でずり這いやハイハイをする機会があまりなかったり、、、この場合は、無理やりハイハイをさせるのではなく、まず体をほぐしてあげることが大切です。体がほぐれて、ハイハイができるくらい体が緩めば、赤ちゃんは自然とハイハイをします。
ハイハイをする前にタッチを覚えている赤ちゃんは歩くほうが楽しいので、ハイハイをしないかもしれません。そんなときはお布団を重ねお山を作り、その上を登らせてあげましょう。
お布団のお山を登るときは四つ這い姿勢でしか登れないため、ハイハイを促すことができます。
背中が曲がっているとき、左右差があるときは
マッサージをしてあげる
自力でおすわりができるようになったものの猫背の姿勢になっている場合、ハイハイは十分にやってきたか、骨盤が倒れる抱き方や暮らし方をしていないか振り返ってみましょう。
左右差がある場合はマッサージをしてあげるのも良いです。
〜離乳食の時の姿勢〜
おすわりができるまでは、
離乳食は保護者の太ももに乗せて食べさせる
そろそろ離乳食が始まる!と思うとまずどんな椅子を買おうか?と悩むかもしれませんが、椅子はまだ必要ありません。離乳食が始まるであろう5−6ヶ月はまだ腰がようやくすわってきた段階であり、この時期に椅子に入れてしまうと、赤ちゃんの姿勢を崩してしまいます。重心を自分で保てず、支えを道具に頼ってしまうと、不自然な姿勢になります。体が安定していないと、ベロはうまく使えないため、誤嚥を起こしやっすかったり、歯が並ぶ顎を作るために大切な、ベロを上顎につけてすりつぶすという動作ができなかったり、顎が上がりやすく口を閉じて食事をすることができません。筋肉の使い方にへんな癖がつくと、くちゃくちゃと口を開けた食べ方が習慣づいたり、お肉を噛めない、飲み込めない葉物野菜を嫌がるなどの食事や栄養面でのトラブルにもつながることがあります。姿勢の安定しないこの時期は、大人が背筋を伸ばし、ベロが上顎につき、口が閉じれる姿勢を作ってあげるサポート椅子となってあげることが大切です。
つかまり立ちをしていたら
立って食べさせてもオッケー
食事というと、すわって食べるもの、お行儀のためにも立たないように躾けなきゃ!と気を張ってしまいますが、1歳くらいまでの食事は遊びと同じです。用意されたその食事がしたいと思えば、すわってくれるかもしれませんが、他に興味があれば、椅子から抜け出してしまうものです。
お行儀のためにも、抜け出せない椅子に座らせたり、動きの制限をするのではなく、立って食べるのもOKとして大丈夫です。座りたくない子に無理やり座らせて食べさせるより、立って食べさせたほうが姿勢が安定するので、ベロをうまく使える、歯並びが育つ食事ができます。
多くの場合離乳食を食べる時間はその子だけが、食事をしていると思いますが、お行儀は目の前で食事をする大人を見て身につくものです。将来的に座って食べるを習慣づけるためには、座って食事をする大人の姿を見せてあげる時間を大切にしましょう。
また食事が楽しいものになると自分から座ってくれる子もいます。子供にとっての楽しいは自分の好きなようにできることです。おちゃんをひっくり返す、溢れた水をびちゃびちゃ叩く、スプーンを落とす、投げる、お粥を手でぐちゃぐちゃに握る、こんなことをさせてあげると赤ちゃんは食事の時間が楽しく椅子に座ってくれます。こんなことを『良し』とできる環境を作ってあげて、その合間に離乳食を口に運んであげると、自分から椅子に座ってくれます。
離乳食椅子から抜け出すなど
自分から座らなければ座らせない
上の項目と説明は同じです。
座る場合は足の裏がつく椅子を用意する
自力でのおすわりができるようになったら椅子を用意して座らせてあげても良いでしょう。この場合は必ず足の裏がべったりつけられる椅子が良いでしょう。
歯が並ぶ顎を育てるためには、ベロを上顎に押し付けながら行う食事が大切です。
ベロが上顎につくためには背筋が伸びていることが、
背筋を伸ばすためには、骨盤が立っている姿勢を取る必要があります。
この姿勢を椅子の上で維持するには、足裏が床に付かなければなりません。
子供椅子の中には足が宙ぶらりんになるものもあります。椅子を購入するときは足の踏み台の調整ができる椅子を探しましょう。座卓で食べる場合も、床に足がつくか確認しましょう。
椅子に深く座らせない
上記の座る場合は足の裏がつく椅子を用意するの補足です。よくある子供椅子にはテーブルが付属しています。このテーブルがある状態で座らせると、足がつける椅子を用意しても、テーブルが邪魔して足裏全体をつけ、体重を支える姿勢を取ることができません。椅子は付属のテーブルを外した状態で使用すると良いでしょう。その場合ハイチェアだと、赤ちゃんの落下につながるので、低い座卓用の椅子を用意すると良いかもしれません。おすすめは変化イスという木の椅子です。
おすわりができるようになったらベビーバスで床に座って
食べさせるのも⚪︎
赤ちゃんに座って食事をさせるというのは必ずしも椅子が必要なわけではありません。日本は元来畳の文化で、庶民が腰掛けるのは縁側や茶店など限られたときだけで、日本に椅子の文化が定着されたのは明治時代になってから。人間の骨格は国によって異なり、日本人の骨格は椅子に座ることが難しいのです。
現代社会に適応させるためには座れる子に育てることは重要課題となりがちですが、骨格の基盤を作るこの時期は、そのこの体の思うままにしてあげるのが一番良いでしょう。小さいものや豆腐を潰さずにつまめたり指先が使えるようになる時期(10ヶ月ー1歳)までの食事は遊びと一緒です。
その時期くらいまではお行儀に拘らず、床の上で食べ物を手や指でグチャグチャにしながら感じ取り口に運ぶという手掴み食べをさせてあげると良いでしょう。
床は大惨事になりますので、ベビーバスの中で行うと片付けが楽ですし、赤ちゃんもこの時間をとても楽しみに、ベビーバスを用意すると自分から入ってくれるようになります。
(おすすめ書籍『子どもの手掴み食べはなぜ良いのか 山口平八 清水フサ子著』)